二重壁構造を持つジオテキスタイル補強土壁工法

外壁と内壁で構成された二重壁構造を持ち、
補強材に「アデム」と「グリッドベルト」を用いたジオテキスタイル補強土壁です。
「アデムウォール工法」は従来の補強土壁工法にはない、さまざまな技術的特長を持ち、
安全で経済性に優れ、美しさを兼ね備えた垂直壁を構築する工法です。

外壁と内壁で構成される二重壁構造により
高品質な盛土を構築できます。

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施工時には、外壁と内壁の間に空間を設けるため、盛土材料の締固め時の圧縮変形に伴う土圧が外壁に作用しません。
そのため、壁面の近傍まで盛土材料を十分に締固めることができ、高品質な盛土を構築できます。
二重壁構造を活かして、壁面材の修復や取替えができるため、維持管理性に優れています。

重機による壁面近傍の転圧状況

重機による壁面近傍の転圧状況

正面図

正面図

遠心載荷振動試験により、
耐震性に優れた工法であることを実証しました。

大型動的遠心力載荷試験装置(国立研究開発法人 土木研究所ホームページより)

大型動的遠心力載荷試験装置
(国立研究開発法人 土木研究所ホームページより)

アデムウォールの地震時の安定性を確認するために、遠心加速度50G場で、
高さ20.6mに相当するアデムウォールに地震動を与える動的遠心模型実験を行いました。

実験では、神戸海洋気象台N-S成分(神戸波)で加振後、最大加速度200gal~800galの正弦波を30波ずつ与えました。
加振中・加振後のアデムウォールは崩壊することなく、粘り強く挙動し、耐震性に優れた構造であることを確認しました。

加振後の試験体の変形状況

アデムの配置を、アデムの引抜けが生じない必要敷設長を確保した上で不等長配置としても、等長配置とした場合と同等の耐震性を持つことを確認しました。

アデム不等長配置

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アデム等長配置

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加振後の試験体の変形状況

遠心力載荷試験の結果、外壁と補強領域の加速度の位相のずれはほとんどなく、外壁と補強領域が一体的に挙動していることを確認しました。

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2007年に発生した、M6.9の能登半島地震において、優れた耐震性を確認しました。
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能登半島地震発生後の3月26日〜28日の3日間、これまでに施工した補強盛土と補強土壁の被災状況の調査を行いました。調査の結果、そのすべてにおいて地震による変状は見られませんでした。

2011年3月11日に発生した東日本大震災において優れた耐震性を確認しました。
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東日本大震災後、5月24日~6月3日にかけ、震度5以上の被災を受けた補強土壁の被災状況の調査を行いました。調査の結果、壁面材の微細なクラックや角欠け程度の変形はありましたが、構造物の安定性が損われる補強土壁は見られませんでした。

二重壁構造が迅速で経済的な補修を可能にします。

設計時の想定を上回る地震や豪雨の影響で壁面材が損傷したとしても、アデムウォールの補強領域が安定していれば、
二重壁の構造特性より、損傷を受けた壁面材を新しいものに交換することで、補修を行うことができます。
盛土本体の再施工が不要となり、工期の短縮や経済性に優れます。

ここでは、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震により被災し、
外壁が前面に170mm変位したアデムウォールを壁面材の交換のみで補修した事例を示します。
補修後に被災した東日本大震災においても、壁面の変位はありませんでした。

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オプション仕様

「センサーアデム」により継続的な安心を提供します。

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「センサーアデム」は、アデムに発生するひずみを計測するための光ファイバーを内蔵し、長期的な計測を可能にしたジオテキスタイルです。
アデムに生じるひずみの大きさや分布モニタリングすることにより、盛土の状態や内部の変状を予測することができ、災害時等における補強土壁の「健全度評価」に有効な手段となります。

特長

  1. 補強土壁の安定性を定量的に評価します。
  2. 耐久性に優れ、長期的な計測が可能です。
  3. 災害時等における補強土壁の「健全度評価」に有効です。
  4. 連続的なひずみ分布を計測することが可能です。

計測システムのイメージ

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安定度評価指標(目安値)

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室内引張試験で得られた応力とひずみの関係から、アデムに作用するひずみに対する安定度を評価します。

アデムウォールへの適用事例

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塩害に強いジオテキスタイル補強土壁工法を開発しました。

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海岸線付近や冬季に融雪剤を散布する道路など、
塩害の影響が懸念される地域に建設される鉄筋コンクリート構造物では、
各部材に対する塩害対策が必要となります。

アデムウォールは、壁面材を塩害対策仕様(従来の鉄筋コンクリートに替えて
短繊維(ビニロン)補強コンクリートを採用)としています。
また、盛土補強材「アデム」と「グリッドベルト」は腐食しないので、厳しい塩害環境に適応できます。

特長

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塩害対策用壁面材の補強材料:ビニロン短繊維
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  • ビニロン短繊維は見やすくするために赤く着色

塩害対策用壁面材に使用するビニロンの特長として、高強力・低伸度で親水性があり、表面の凹凸によるセメントマトリックスとの付着と耐アルカリ性に優れています。

ビニロン短繊維の物性

直径

標準長

0.66 mm

30 mm

切断伸度9.0 %
ヤング率23.0 GPa
引張強度900 MPa密度1.3 g/㎤ 
盛土補強材「アデム」内壁安定ジオテキスタイル「グリッドベルト」
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「アデム」は、アラミド繊維をポリエチレンで被覆した構造です。「グリッドベルト」は、ポリエステル繊維製です。アデムとグリッドベルトの厳しい塩害環境下における安定性を確認するため、耐薬品性試験を行いました。塩化ナトリウムに対する試験において、アデムとグリッドベルトは十分な強度保持率を確保することを確認しました。

耐薬品性試験結果(塩化ナトリウム)

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  • 1 建設技術審査証明報告書(技術名称:「アデム®」HG タイプ、建技審証第0804号)